どれだけ広告を出しても応募が来ない。せっかく採用できても、半年以内に辞めてしまう。そんな悩みを抱える会社は少なくありません。多くの経営者が「もっと採用活動を強化しなければ」と考えますが、その前にやるべきことがあります。
それは――バケツの穴を見つけることです。
採用の悩みの本質は「流出の原因」にある
人材採用を「水を入れる作業」に例えるなら、社員が辞めていく会社は、底に穴の空いたバケツのようなものです。
どれだけ上から水を注いでも、下から抜けていけば溜まりません。広告費をかけても、エージェントに紹介料を払っても、辞める理由が放置されたままでは、採用活動は延々と続く赤字プロジェクトになります。
多くの企業が「応募者を増やす方法」ばかりを模索していますが、本当に見るべきは、なぜ人が辞めるのか、なぜ定着しないのかという点です。ここに目を向けずに採用に悩んでいるとすれば、それは「穴を塞がずに水を足し続けている状態」といえます。
採用がうまくいかない原因は「思い込み」
離職の原因を探るときに立ちはだかるのが、“経営者自身の思い込み”です。
「うちは給料も悪くない」「残業も減らしている」「みんな仲がいいはず」――そう思っていても、実際の現場は違うことがあります。人が辞める理由は、条件面よりも“人間関係”や“働く空気感”にあることが多いのです。
特に厄介なのが、経営者からは見えにくい「地雷上司」の存在。これは、本人に悪気がなくても、部下に強いストレスを与えてしまうタイプの上司です。いわゆる「お局様」と呼ばれるタイプもあれば、男性でも「責任を取らずに指示だけ出す」「気分で態度が変わる」といったケースがあります。
こうした人間関係の穴は、給与や休暇制度を整えるよりも深刻です。なぜなら、どれだけ条件が良くても、一緒に働く人間がつらいと、人は長く居続けられないからです。
条件面は「絶対」ではなく「コンセプト次第」
もちろん、条件面が軽視できるわけではありません。残業の多さや休日の取りにくさは、職種によっては致命的です。ただし、それは絶対条件ではありません。
重要なのは、どんな人材を採用したいのかを明確にした上で、その人にとって魅力的に感じられる環境を作ることです。
たとえば――
・安定よりも挑戦を求める人には「成長できる環境」
・家庭との両立を重視する人には「柔軟な働き方」
・職人気質の人には「腕を磨ける現場」
会社の採用コンセプトを明確に打ち出せば、条件をすべて整えなくても、共感してくれる人材は必ず現れます。
この「採用コンセプト」は非常に重要で、別の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひそちらも覗いてみてください。
採用活動は「水を注ぐ」より「漏れを防ぐ」ことから
多くの経営者が、採用活動を「人を集める施策」として捉えています。しかし、本当に成果を出す採用は、流出を止める施策から始まります。
まずは、社員アンケートや1on1などで、「本音で話してもらえる場」をつくること。辞めた人の退職理由も、できるだけ丁寧にヒアリングしてみましょう。
その中で、もし“地雷上司”の存在や、現場の不公平感が見えてきたなら、それこそがバケツの穴です。
その穴を一つひとつ塞いでいけば、採用コストは確実に下がり、紹介や口コミで人が集まる会社に変わっていきます。
まとめ:採用の正解は「増やす」より「直す」
採用に悩む企業がまずやるべきことは、求人広告を増やすことでも、採用ツールを導入することでもありません。
それよりも先に、「なぜ人が辞めるのか」「なぜ居続けたいと思えないのか」その答えを見つけることです。
採用とは、穴の空いたバケツに水を注ぐ作業ではなく、“漏れないバケツを作ること”から始まる経営の課題なのです。
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